地方自治体が向かっている方向

最近はあまりないのですが、道路関係の部署にいたときに、昭和50年代ぐらいの書類(地図に関しては明治も)を、戸籍関係の部署にいたときに、場合によっては明治の書類を、多く見る機会がありました。基本的に、今の地方自治は、明治に始まっていると考えてもいいでしょう。
まず、紙に関しては素材からして違います。保存を考えたときに、やはり多くは和紙。それから紙の大きさも色々と変遷を経て、今はA4に統一されようとしているところ。
市役所だと、いろいろな部署を経験します。私は道路→市民窓口→税(国保)という感じで回っているのですが、その部署にいるときに、近くの領域のところも多少は見えます。そんなわけで、地方自治の過去から未来まで、ある程度広い範囲で見える――というか、波間に漂って視界に入ってくるという感じですが――ものがあります。
まずは、土地について。明治の時代に、というかもともとは太閤検地に遡るようですが、大掛かりにほとんどの土地の測量をやっています。土地について縄かなんかを張って測量したようですね。それで土地の面積や地番を決めた地図ができたんですが、これ、何度かその時代の最新技術を使って再測量してるんですね。で、その再測量、ある程度の時代、まあ昭和50年代ぐらいからは精度がいいので、それはほとんど現地にも再現されうるんだけど、明治のままほぼ測ってない、ってとこが結構多い。最近の測量を、国土調査、といって国から補助金も出るのだけれど、都市部ではほとんど進んでいない。というわけで、この分野で、革新的な技術の登場*1が待たれている。これは東日本大震災の被災地などでも要望が強いだろう。そして実務的には地図情報システム(GIS)の関係で、ある程度goole mapとも親和性が高いだろう。ゼンリンの地図とか。情報の利活用の面で、将来性がある分野だと言っていい。
次に、保険。市町村は国保を担当しています。社会保険、という会社の福利厚生で、健康保険やってる、っていうのもいつの時代まで持つのか不明な点がありますが、会社の福利厚生から漏れた人々に、国民皆保険を提供するのが市町村国保です。とはいえ、歴史的経緯から市町村がやってはいても、市町村単位で「保険=insurance」なんてマジかよ、って感じで、まあ実際はもちのろんで国の関与があってなんとかやってるわけですが、それならいっそ国がやれよてなことも思いますが、今一応都道府県単位でどう?みたいな話が出て、都道府県から強烈な反対にあっています。なんていうか、クソ赤字だから。そんな国保、歴史的経緯から社会的意義はありつつも、今は一億層中流も昔になりにけりで、ほぼ失業者の健康保険になっています。そもそもの性格が変わってきたので、バッチがかなり必要なんですが、前年収入から保険料を算出するのが失業者にとても痛いので、「非自発的な失業(クビ、倒産、派遣切り)だったら、給与所得を30%で計算するよ」ってのがリーマンショックの阿鼻叫喚の中で誕生しました。これがないと大変だよ、っつーぐらいに今大変。自営業者の互助制度から、失業・無業者の救済へと制度の中身が変わってきた時に、まあバッチぐらいは貼るけども、というのが現状で、これからも綻びればバッチが貼られるでしょうが、さて、そういう救済制度、そして市町村担当からもっと大きなところの担当にして、保険の役目を果たすことができるかがこれからの課題ですね。もちろん、現状はよくなっています。75歳以上(後期高齢者医療保険)の切り離しと広域化(都道府県単位)と個人化は、これからの国保の試金石にもなりましょう。
最後に住民登録制度ですね。これがまた個人情報保護との関係で難しい。自治体側にまだ個人情報保護の理解が深まっていないのかな。情報の保護と利活用と取捨選択がようやく意識されかけているところです。昔は戸籍も住民票も公開情報だったから、岡山県の教育会社(トラのキャラクターで有名)なんかが住民票を集めてDMしていたとかいいますね。ただ、保護一辺倒ではなく、この膨大な個人情報は、自治体の財産でもあるわけですね。これは国にも県にもない自治体だけのもので、国や県は、市町村の情報を利用している、ということになるわけです。こういう状況には本当に整理が必要で、とりあえずは今あるものを電子化していくのが第一かな、と思います。例えば南三陸町の戸籍データは津波で消失したわけですが、戸籍なんて市町村で何も必要としないのだし、国が何とかデータを得るべき、得たいはずだ、と思います。まあ南三陸町は戸籍データが電子化していたようですが、日本には電子化してない市町村がまだまだたくさんあります。ここは国が主導で、何とか電子化させるべきでしょう。いや、こういうリスクを経験したのです、必須だという機運はあるはず。将来的には今の外国人たちのように、国がパスポート的な情報を管理し、市町村は住所の管理をする、とういう方向に変えていくべきで、外国人登録法が廃止された流れを見ると、戸籍法もそうなっていいのではないかと思います。自治クラウド、というバズワードが聞こえては消えていきましたが、この分野でクラウドというのは今目指すべき目標です。データベースの管理は、大昔は紙、昔はレガシーシステムメインフレーム)という市町村独自にカスタマイズが必要なもの、そして昨今はオープン系というパッケージがある程度市町村間で共有され、法改正対応があるものになってきた。これからはクラウドで、システム自体全てレンタル、データも物理的に庁舎内にない、という状態が、リスク管理の面からも要求されるだろう。この分野も進化が要求される。そして可能である。
あと、税にも関係ありますが、マイナンバー。今でも自治体内の全ての情報は、番号を持っています。ただこれ自治体内だけのことなんです。マイナンバーはそれを国内で統一させる主キーを持たせようというものだと理解しています。どれだけ活用されるかは不明ですが、今現在自治体は郵便に依存して情報をやりとりしています。ただ、住基ネットが稼動して、転出入の情報のやり取りは、一瞬で行われるようになりました。これも昔は郵便でやっていたのです。住民票に関わらない分野でも、マイナンバーがあれば自治体間で情報のやりとりが一瞬で行われるなら、事務が非常に効率化されます。そしてこれは個人情報保護とセットです。こういう教育が、日本全国に広がっていけば、実現されることなのかなあ、と。
とりあえず、自分の観測範囲からは、こういう状況が見えます。

*1:GPSなんか結構効果あると思うんだよね