所得とその亜種達

所得と一言で言っても、実は何を指すのか非常に難しい。巷では「年収」とか「年商」とかいう言葉が流行っているが、これも実際何のことかわからないし、給与所得者の年収は給与収入とほぼ読み替えることができるが、営業所得者等の年収とか年商とかがイマイチ何なのかわからなくて、互いを比べることができない、ということもある。
それ以外にも、実は所得というのは扱う役所や部署によって捉え方が違うのだ。
最近でのトピックと言えば、「年金400万円以下(+その他所得が20万円)の方は確定申告不要」というのが今回から始まった。実はこのことからもわかるように、税務署は所得を把握しない。とりあえず所得税を集めれば良い、というスタンス。確定申告をすれば所得というのは確定しますが、確定申告をしていない給与所得者(年末調整済み)や年金生活者の所得は把握する気はないよ、という感じ。だから、税務署である人の所得を知ることは恐らくできない。
それに対して市町村は、所得は全て申告して下さい、という立場。税務署のように省略していい所得はない。給与所得者も年末調整が済んでいたらそれ以外に所得が20万円以下だったら申告不要、というのはあるけど、市町村にはない。アルバイトをしていて10万円の給料がプラスであれば、それも市町村に報告があるので、勝手に合算しています。そういう意味では、未申告である所得を除いて、基本的に全ての所得を把握している、という立場。というわけで、課税にともなって副次的に所得も出てくるので、所得証明書を発行してたりしますね。そして所得証明書が出ない人、というのは市町村の立場としては「申告していない人」となります。何か課税資料があれば、一応それが全ての所得と見做して所得証明は発行しているけど、何にも資料がなければ、専業主婦だという口頭の申し出だけでは所得証明は発行していない。あくまで所得がないことと申告は書面でしてもらっています。営業他の申告書と同様。
あと私は国保税の担当なので、国保としての所得の考え方ってのもまた別。上記は分離所得という、不動産の売却益なんかは分離して別計算で課税をするのだけど、国保税としてはこれも所得として捉える。だから土地を売った次の年の国保税は売却益分上がる。これは不動産を売る人は覚悟して置かなければならない、という有名な話。
各分野で所得を参考にしたいと思っている。私の知っている範囲では、市町村の中では保育料などがある。そこは多分調査権がないのか、保護者自身に源泉徴収票などを提出してもらっている。で、実は「所得税」を所得など経済状況を示すものとして使っている。つまり、控除等、税金を計算する時には所得から差し引いて考えるべきもの、も含んだ計算になる、ということだ。話がとっちらかって申し訳ないが、私の担当する国保税は、市町村によっても違うのだが、うちのところでは所得のみを計算の根拠としている。控除は見ない。だから年少扶養控除の影響はそもそもない*1。でも、保育料は控除を見る。そういう点でその人がどのぐらい所得が多いと考えられるかが、国保税と保育料では違ったりするわけね。
で、もう一つ、高校無償化に伴う私学の就学支援金は、市町村の所得証明書を取得させて判断することになるようだが、ここで見ているのは住民税の方の所得割。これも所得税に性質は近いが、所得税と住民税と控除の額が少し違うので、これも人的控除、つまり扶養が多い人が相対的に不利にはなる。大差ないけど。
どこの役所も部署も、所得、というかその人の負担できる能力、担税力を知りたいだけなのだろうが、めちゃくちゃややこしいことになっちゃってるよ。これ全部わかる人はほとんどいないし、だからこそ16歳未満の扶養控除がなくなった影響が全然わからなくなっちゃうんだよね。

そもそも影響ない→大多数の自治体の国保
影響あるけど、影響がないように配慮した→大都市の国保・保育料・高校就学支援金
影響がある→所得税・住民税・あと不明

最後におさらい。所得の亜種として、所得的な各人の能力を見ることができる指針を挙げてみます。
・所得のみから計算するもの:源泉徴収票に載っている所得・市町村が把握する所得・国保税を算出する時の所得(外部に出ることは基本的にない)
・所得から控除を引いたのちに算出されるもの:所得税額・住民税所得割
あと、行政的には「住民税非課税世帯」というのも見たりします。世帯全員が住民税非課税かどうか、という指針。

所得って何なんでしょうねぇ。

*1:影響受ける計算方法のところも、今年度については影響を受けないよう配慮する政令か何かが出ています。