一市職員の考える「あるべき論」

もうひとつのゼロベース思考

たとえば学生なら、「もしも自分がゼロから大学を設計できるとしたら、どんな大学を作るだろう?」と考えてみてほしいのです。

一市職員の私が、行政の仕組みの波にさらわれながら思うことは3つあります。
国の機関として、所得庁、住所庁、マイナンバー庁を作ることです。
まず所得庁について。僕の担当する国保税は、市によって税だったり料だったりするもので、税も料もある意味では同じということを表しています。国保税は所得から算定されますが、他にも所得から算定される税や料は多い。国税としては所得税地方税としては住民税、国保税(料)、他に保険的な性質のものとして介護保険料、後期高齢者医療保険料、あとは保育料等々。これらは同じ所得というものを標的としているのに、所得情報を別々に集めているのです。もちろん、情報のやりとりはあります。国税地方税も、所得の調査権を持っていますので、照会すれば回答は得られますが、あくまでも別の機関が待つ情報として、共有はしていません。あとは所得情報は市町村が利用することが多いですが、市町村の内部でも、各担当ごとに所得情報を集めたりします。これらは各担当の税・料ごとに所得の定義が違ったりするからでもありますが、非効率な部分も多い。
だとすれば所得情報は一つの機関が一元管理すればいいと思うのですよね。今の状況というのは、あなたの所得情報が、郵便や文書や、地方公共団体のオンライン端末を飛び回っている、という状況です。そのほうが漏れやすいような気がします。一元管理した情報を、行政が必要な範囲・権限で共有する。今は所得税と住民税では、その元となる所得すら違っているのです。ほとんど非効率そのものです。
そして住所庁。行政は住民とのやりとりのほとんどを、郵便を使って行います。これは慣例的なものでもありますし、文書主義のためでもあります。将来的にはインターネットを使ってやりとりすることができるようになればとは思いますが、慣習の面からしてその時代は先でしょう。現実的には住所を使ってやりとりする時代は続くでしょうが、その時に現在の住所制度は欠陥だらけです。官庁などは本人からの申出以外には個別の住所情報は持っていないでしょうから、頼りにするのは市町村の住民票(住基ネット)ぐらいだと思いますが、そもそも住民票情報は届出が主な情報の担保手段ですから、実態と隔離している。市町村が住民票の住所宛に郵便を送ったって、届かない場合が多々ある。いや、もし本当にそこに住んでいたって、郵便局が把握してなきゃ、届くわけないんだから。
そういうことから考えて、行政の大事な基盤となる住所情報は、郵便局が管理するのがいいんでないの?と。郵便局のある部分を国有化し、郵便局に住所管理の窓口を設けて、転居の手続きはそこで行うようにする。所得の話と同じように、住所も一元管理できればいいし、それを管理する能力があるのは郵便局だけだろうと思う。ちなみに、郵便局の住所把握の能力は高く、市役所が本人から届出された住所に郵便を送ると、かなりの確率でそこに届く。なんだ、そっちも知ってんじゃん。それなら住所庁は郵便局の中に作ればいいのに。
最後にマイナンバー庁。戸籍はもともと住民登録の制度でしたが、今ではほとんど抜け殻のようになっています(いや、なっていませんが、行政としては戸籍は使用する権限があまりありません。使えないのです)。戸籍から枝分かれした住民票が住民登録の主なものとなっています。住民票は住民だけを対象にしていて、自治体間の異動があると作りなおされたり、海外へ転出すればなくなったりと、国民を管理するものではありません。国民総背番号の導入の時に、多分戸籍を復活させるというか、このへんを統合するような番号として導入しようとした匂いもあった気がするのですが、結局はなくなって、住民票に対して一意の番号が振られました。そしてまた住民票コードも使用する権限がない、という意味で抜け殻のようになりかけています。
今、税と社会保障を繋ぐ一意の番号として、マイナンバーというものが進められようとしています。これはできれば戸籍と住民票を潰すものであって欲しい。所得を一元化し、住所を一元化すれば、あとはそれを通す串として、個人情報を一元化すれば本当に全てが繋がります。戸籍も住民票も不要です。マイナンバー庁でマイナンバー(と氏名と生年月日と性別も一応入れときましょうか)を管理すれば、あとは所得庁で所得とマイナンバーを管理し、住所庁で住所とマイナンバーを管理すれば、全てが一本で繋がるのです。
こうなれば、皆さんおっしゃるように、公務員なんて不要になるかもね。