全市町村が合併したら?

市県民税に関わるところで働いていると、各会社等から給与支払報告書の提出を受けて、それを整理するという結構なボリュームの仕事があります。係全体が何ヶ月かこれにかかりっきり、ぐらいなイメージすらある。で、この給与支払報告書って何?ってことですが、皆さんのお手元に届く、源泉徴収票と中身は同じです。提出先が市町村なので、そういう名前をしているだけ。
ところでこの給与支払報告書なんですが、これ皆さんが住んでいる市町村にそれぞれ分けて提出する必要があるんですよね。大きな会社の事務部門なんてのはこれを全国一括で処理しているのでしょうけど、ほとんど全市町村に提出するような会社すらあると思うのです*1。これを想像すると、メチャクチャな業務量なんじゃねーの?と。
会社のほうが、従業員の住所によって提出先を振り分けるとか、そういう仕組みになってんスよ。会社に取って意味のあることじゃないのにねー。さらに皆さんの給料も会社から天引きされてることが多いでしょうが、それもそれぞれの市町村に、会社が支払ってんスよ。大変なことです。
往々にしてこういうことはある。例えば、全市町村が合併したとすらなら?この給与支払報告書は全部まとめてどかっと手近な市役所窓口に提出すりゃあいいって話になる。電子的に提出するのが楽なら、もう一発だ。住民税なんてのはほとんど税率が変わらんし、区ごとに税率設定したほうが効率的な気もする。
他にも全市町村が合併したら、とたんに効率的になる事務ってのはある。
・市町村をまたいで住所を異動させたときに、転出届と転入届をする必要がある。2回も市役所に行くのかめんどくせー、って話なんだけど、同一市町村内の転居届なら1回市役所に行くだけで済むので、全市町村が合併したら2回市役所に行く必要はなくなる。
国保や介護等の保険では対象者の前年所得を元に、保険料を決定してるんだけど、そのために前住地*2に所得を教えて、と照会をしている。郵便で。これがまたたまらん業務であって、尋ねる側も答える側もヒーコラ言ってる。全市町村が合併したら、この業務が全く不要になり、転入転出によって保険を脱退・加入する手間もなくなる。
・戸籍は本来、国の事務なのだけれど、市町村が手足としてやることになっている。そのために、本籍がない市町村で戸籍届(婚姻届等)の提出をしようとすると、戸籍謄本などの添付が必要になったりする。また戸籍を取りたくても、本籍がある市町村でしか取ることができない。もし全市町村が合併したら、戸籍届に戸籍謄本等の添付は不要になるし、どこの市役所でも戸籍を取ることができるようになる。さすがに全市町村が合併したら、電子化してないところも電子化するだろう。
まあこのへんが僕が携わった中で、効率化するだろうなあ、と考えるところ。というか、規模は小さいとしても、平成の大合併によってこういうメリットは多少産まれたのだと思います。市役所の業務は「法定受託事務」という国からやることを決められているような仕事も多いし、自治事務であっても、国がやり方をガチガチに決めてあって、自由度がないものも多い*3。そんなわけで、そういう業務は全市町村が合併すれば、特にメリットがでるなあ、と思います。
それともう一つ、災害対応の面でも合併には効果がある。静岡県平成の大合併で、海と山が合併した市も多い。実際311のような津波を考える時、海側の少自治体だけでは対策が立てにくかった。合併後にそれを考えているわけですが、うちの場合、メインの庁舎は津波が来ないだろうなあというぐらいの山側なので、津波があっても市役所が壊滅する可能性は低いし、海側のこと、山側のことを一緒に考えることによって、海側の対策を俎上に乗せられる。大数効果という感じ。
そんなわけで、市町村には合併したらまずいところもあるんでしょうが、残念ながら私はそういう部署に回ったこともない。合併していいようなところは本来国の仕事で、郵政公社の分社化みたいにできたらいいのになあ。

*1:自動車会社とかー、コンビニとかー、スーパーとかー

*2:1/1に住んでた所で所得を調べて、住民税を課すからね

*3:住基ネット的なものとか