国保のお金持ち半額制度

国民健康保険税を担当していますと、この時期特有の業務があります。年末調整や確定申告のために、支払った国保税をお知らする、というものです。
国保税は、社会保険料控除として、年末調整の場合は職場に伝えることによって、また確定申告では税務署に申告することによって、社会保険料として支払った金額を所得から控除し、税額を安くする(年末調整や確定申告でその分還ってきたりする)ことができるのです。
さて、以上が前置き。以下はお金持ちの人は、国保が安い、というお話。
国保というのは基本的には支払能力に応じて高くなる。だんだん高くなって、超大雑把に言って年間所得1000万円ぐらいで頭打ちになる。法律で上限は決まっていて、40歳から65歳の場合、77万円がその上限である。お金持ちなら、まず国保税は77万円になっているはず。ちなみに国保税は世帯主に課税されるから、他に所得がある人が世帯に何人いても、77万円が上限です。
ところで、課税所得が1800万円を超えると、所得税最高税率である40%です。住民税は一律10%ですから、1800万円超えた部分には50%の税率がかかっていることになります。で、最初のほうでお話した、社会保険料控除ですが、所得から社会保険料として払った金額――この場合は国保税の77万円――を控除(つまり、差し引く)できるわけです。77万円払って、所得から77万円控除すると、返ってくる税額は77万円にかかっている50%の税金である、38.5万円。
そう考えると、お金持ちは国保税に77万円払って38.5万円税金が安くなる、つまり、国保税は77万円の半額である38.5万円だ、ということですね。これが応能負担の国保税の実態である、と。月3.2万円で、家族が何人いても医療は3割負担。なるほど。
さらに医療費控除という制度もありまして、これは一般にサラリーマンが確定申告をする理由として一番多いもの。医療費がかかった場合には、社会保険料控除と同じように、申告すれば、所得から差し引け、税額が下がるというもの。これもお金持ちに有利なんだけど、先ほどの最高税率40%+10%で考えると、10万円を超えた*1医療費の半額が返ってくる、ということになる。お金持ちにとって、3割で受けている医療が、年間10万円を超えると1.5割で受けれるようになるってことですね。これ市販のお薬とかでもそうですし(つまり、半額になる)、お金のかかる先進医療でも場合によっては医療費控除の対象になりますね。
以上はぼんやり考えて想像した話ですが、健康保険制度は意外とお金持ちに有利な制度のような気もします。

*1:医療費控除は医療費が年間10万円以上、もしくは所得200万円以下の場合は所得の5%を超えた部分が対象