国保の大きな12%

国民健康保険の納付率が88%になったとかありました。なんだ、90%近い人が払ってんじゃん、と見ることもできるんですが、この12%がどれほど大きなことか。小売で言うなら粗利が全部吹っ飛ぶほど、国保で言うなら丸々12%は赤字みたいなもんですよね。
で、実際には88%の人が払っているというわけではない。安定的に払ってくれる上客からは収めてもらっているけど、移動が激しい定住していないような方からはほとんど収めてもらっていない、というようなことだと思う。実際に、単身で転入してきた世帯で、第一回目の納期にお金を払ってくれる確率は、体感にして10%ぐらいな気もしてしまう(これはただの感覚なので真に受けないよう願います)。
自分の払っている保険が、お金を払わずに発動すると思える人はいるだろうか?健康保険だって保険なのだから、お金を払うのが当然だと思う人は多いでしょう(そして払ってくれている人もまた多い)。しかし実際には88%しか納付率がない。
国保税の計算は、応益分と応能分がある。益を受ける部分として固定の金額、そして払える能力(所得から見る)に応じた金額が課税される。さらに、今年からは失業した人は所得を30%として計算する制度があり、所得が少ない人には固定の金額の2〜7割の減額制度がある。制度として何とか払えるような金額を設定しようとしているのであり、もし払えないとしてもそれが12%とは思わないし、金額としてももっと軽微な影響になるだろう。
これを裏返すと、国保税を払えるのに払わない人がいるということになってしまう。
ただ、実際に国保税をかける仕事をしていて、国保の入り口にいる若年単身世帯などに「届いてないなあ」と思いながら今までと同じことをしていること自体にも疑問を感じる。これから彼らを取り込んで長期優良顧客になって貰おうとするには、いきなり親切味のない通知書と納付書を送るのは効果が薄いのかなあ、と。
少しまとめよう。国保税の未納の12%は非常に大きい金額であるということ(基本的に未納0%を前提にしているから)、今まで払っている人が払ってくれているからこれぐらいで済んでいるけど、新規加入者の8割ぐらいが未納なんじゃないかという体感があるということ、そしてそれが主に若者であるということ、である。
若者は高齢者より健康保険を必要としない。よくわからんが1/8ぐらいか?それなのに保険料の計算は一緒である。保険の考え方から言って、これは暴力的なことだと思う。何よりこれでは新規にコミットしてくれない(国民皆保険だから加入はするのだけれど)。
さらに生活の根拠が定まっているのでなければ、他市へ転出してしまえば未納に対するリスクも低い。差し押さえなども物理的な距離によって難しくなるだろうし、次の市ではまた保険に入ることもできる。もし深刻な病気や怪我になっても、以前の分を払えば国保は適用される。基本的には払わなくて問題になることが少なすぎるのだ。
これは国民皆保険に関する疑問にもなる。国民皆保険と言いながら、それを前提として欲しているのは、必死に保険料を払っている相対的な高齢者(75歳からは後期高齢者医療保険になりますが、これも65歳以下の保険からの支援金によって成り立っている面がある。)のほうだ。
これも纏めると、国保税を払っている人は、払っている以上のサービスを求めているということも言える。若者から取り立てて、こっちへ回せ、という。
保険を必要としない人が、保険に入らない選択肢というのは割と大事なことだと思う。それをなくしているのだから、少しはその人達に歩み寄るべきだと思う。若者が多少とも高齢者を支える必要がある仕組みなのだから、もっと納得感が欲しい。
そうでなければ強制的に引かれる仕組みが必要。
国保はもう身動きが取れない状態ですね。多少とも市町村でできることがあるとしたら、通知をもっと若者にもわかる文体や内容にすることですが、ちょっと考えてみたんですが、なかなか難しい。もっと広域でやれたらと思うのですが…