e-taxは、もういーたっくす

確定申告はまだ続いています。ところで日本の確定申告って、諸外国と比べてどうなんでしょう?源泉徴収っていう給料天引きが納税者意識を減らす、とも言われますが、アメリカでも源泉徴収制度はあります。ないのは会社がちょこちょこっと税金の過不足を精算するという年末調整という制度。アメリカでは年末調整がないので、給与所得者であってもみんなが確定申告をします。源泉徴収は普通多めに見積もって取られているので、アメリカでは確定申告のことを「税を取り返す」=Tax Returnと言うそうです。こうなると納税者意識も育つというものでしょう。
さて、日本では給与所得者は年末調整で所得税がビンゴの数字になるので、確定申告の必要な人は非常に少なくなります。しかし年末調整の制度がない所得というものもあります。それが年金です。年金からは源泉徴収はされますが、年末調整はしてくれない。よって年金受給者は年金が2種類あるとか、他に所得があるとか、生命保険料控除があるとかの理由で確定申告が必要になる確率が高い。ちなみに20万円以内の所得があっても確定申告不要ってのは給与所得者で年末調整が済んでいる場合だけなので、年金所得者はちょっとだけ別の所得があったということでも申告は必要。
確定申告の現場についてお話します。上記の話を纏めると、「給与所得者は確定申告が不要な人が多いが、年金所得者は確定申告が必要な人が多い」。もっと砕いて言うと、確定申告をしている人の大半は、高齢者だという話。
60歳になってから、「今年退職して会社で年末調整してくれなくなったから確定申告にきた」というところから彼の確定申告人生は始まる。曰く、「俺ぁ確定申告について何にもわからない。」。日本の納税者意識は、ここから培われ始めるのだ。遅きに失す。むしろ給与所得者にとって年末調整不要で、年金所得者にとって年末調整ありのほうがいいぜ。
というわけで、確定申告の会場では高齢者ばかりである。そして国税局が確定申告の負担を軽減するために推進しているのが有名(?)なe-taxだ。基本的にe-taxというシステムの顧客は高齢者が大半であるという事実。そして高齢者とPC操作の相性の悪さは衆目の知るところ。
それでも彼らはe-tax推しなわけで、確定申告会場にはe-taxの端末が設置され、至れり尽くせりで指導して高齢者をe-taxで申告させてしまう。そして一番の売りは、何と言っても「e-tax使うと5000円返ってくるよ(税額控除があるので)」ということ。
かくして迷える子羊はe-taxの餌食となる。住基カードを作り、電子証明書を格納し、税務署の確定申告会場で手取り足取りe-taxで申告する。
そして来年になって、「e-taxで確定申告!」みたいな通知を貰い、「確定申告書が届かないんだけど」と市役所に電話をしてくる(ここではあんまり触れないけど、市役所と確定申告の関係というのがまたデリケートなのです)。
「昨年e-taxで申告された方にはそういう通知が届くそうです」
「でもe-taxなんてやり方もわからん」
「一応市役所では対面で確定申告書の作成もしています」
「じゃあ、市役所に行く」
こういうやりとりから考えて、e-taxにメリットを感じている人は少ない気がする。また、利用した結果メリットを感じる人も少ないようなので、リピーターも増えないだろうな。このままならe-taxもかなりの徒花に終わりそうだ。