市役所の窓口に対して、「こないだ行ったら酷い目にあった」「割としっかり対応してくれた」の2つの感想があると思う。これは市役所内にマニュアルが存在しないこともあるのだろうなと思う。前にも書いた気もするけど、市役所内には接客のルールが存在しない例が多いと思う。お役所言葉的な「ご苦労様でした」もマニュアルがないからこそずっと残っている。お金を貰う部署であっても、お金を頂いて「ありがとう」、なのか、飽くまで役所はニュートラルであり、かけさせた手間に対して「お疲れ様」なのか、はっきりしていない。
そうすると、はっきり言って個人の資質の問題になってしまう。先輩からの指導は飽くまでも先輩の思った接客道であり、それが正しいものかはわからない。異動があることを考えると、先輩が指導できない状況も考えられる。僕も今のところ電器屋での接客を思い出しながら接客をしているのであって、それが役所の窓口に適応するのかはわからない。
たまたま接客に関して見識のある人が窓口担当になれば、「割としっかり対応してくれる」だろうし、そうでなければ「酷い目にあうケースもあるだろう」
さらにもう一つ別の視点。対応するのは同一人物であっても、仕事内容によっては「酷い目」にあわせることがある。簡単に言うと来客者の準備が整っていれば簡単な手続きで済むものが、そうでなければこちらの問いかけが失礼なものになりうる、ということだ。
例えば本人確認。運転免許を持っている人は、日本全国どのような手続きでもある程度は簡単にできると思う。ところが持っていない人になると話はややこしい。その人が本人であることを確認するために、写真付きの身分証明できるものを求めることが多く、そんなものは免許以外にはあまり存在しない*1。「免許はお持ちですか?他に顔写真の載った本人確認できるものは?キャッシュカードですか、それではお手続きできません」
免許を持っているのは車を運転するためであって、役所で手続きするためではない。でも、簡単に言えばそれだけで役所での対応って変わっちゃうんだ。本人確認できないと転出するだけでも大変だ。すったもんだした挙句、30分かかって転出証明書を得、今度は転入する市町村に行ったところで「運転免許等本人確認できるものはございますか?」すったもんだのやりなおしだ。
何が必要とされるかを説明するのは難しい。役所がなぜ本人確認にそこまでこだわるかと言えば、虚偽の届を他人が提出した場合に、対象の人が困ってしまうからだ(といいつつ困るのは役所だろうけど)。本人にとって自分が本人であることは自明だからそんなことを考えないけど、役所にとってはその人が本人であるかどうかはわからない。そういう認識の違いがあるわけね。
窓口で相手の人が怒ってしまうようなケースって「選択肢の運が悪かった!」と思うケースが多いのです。手続きの順番を変えていれば通るのに、とか。印鑑証明なんかでも、印鑑登録証を紛失してそれをもう一度欲しいと言われたときに本人確認できなくて再交付できなかったり、対象の人がボケちゃってたりする(大雑把に言って、ボケてたら印鑑登録できない)。印鑑登録証をなくさなければ全部丸く収まったのに、というような。
役所には「これだけは外せない!」というツボがあって、そこだけは非常に頑ななのです。上の人に怒られるから。逆にそこさえ押さえてくれてあれば、あとはダーダーな可能性もある。極端に言えば運転免許さえあればあとは全部こっちで処理する形で転出も転入もできる。申請書とかも誤字脱字修正なんでもオッケー。書いてなくてもいい。(あと役所側で言う「期限」ですけれども、基本的には期限を過ぎていても手続きの可能なことがほとんどだ。実質、期限なんてものはその期間内に役所が処理したい、というだけのようだ。)
例えば出生届、婚姻届、死亡届なんかでは、持ってきてもらった人に絶対に書いてもらうべきところは決まっている。決まっているけど驚くほど少ない。出生届では子供の名前と届出人の署名と届出日。婚姻届では新しい本籍と夫婦のどちらの姓を選択するかと届出日。死亡届では届出人の署名と届出日。これらに関しては後日問題になったときに本人の意思が表れるところなのでうちの市では本人に書いてもらっているが、市町村によっては書いてなくてもオッケーとしてしまうところもあるようだ。
不幸にもそういうツボを押さえていなかった場合、市役所の人は非常にお堅いです。冷たいとも感じられるでしょう。そこのところはなかなか埋めにくいところである気もします。少なくとも接客内容の統一やマニュアル化なんかは各市役所に求められることだとは思いますが。

*1:他にはパスポートや顔写真付き住基カード