マイペースに仕事をしています。それにしても未だにわからないことばかりで困る。だいたい覚えたことであってもしばらくやってなかったら忘れてしまうのだから。ほんと厳しいぜ。ところがこれは僕ばかりではないようで、他の人にとってもそのようだ。離婚後何百日が嫡出推定だとかってのはなまじ研修終わってすぐの僕のほうが覚えている部分ではあって、経験豊富でも忘れてまうもんなんですね。ここまでくれば割と同じ土俵だと思うんだけど、まだまだ初出の現象が多いのでシュンとする。
さて、僕の担当は「住基(住民基本台帳)ネット」でもあるのだが、実は住基ネット自体があまり頻繁に使われていないので日常業務ではあまりそういう意識がない。先日も研修があったようだが、戸籍の研修と被っていけなかった。というか自分の担当の研修に全部行かせて貰ってたらほんと研修放題だろうと思う。住基と戸籍と外国人は同一の担当がやってるケースは少ないと思うんだよな。現状ではそれに税務証明とかゴミ関係をスパイス的に追加しつつ、みたいな。
さて、ここからが今日のメインですよ。住基ネットの研修は行けなかったけれど、かわりに行ってくれた人が資料を回覧してくれたのでじっくり見てみた。割と面白い。
まず第一に住基ネットは訴訟を抱える危ういシステムだということ。国民総背番号制として話題になった時に拒否の姿勢を貫いた人や団体もあった気もするけれど、それが割と響いてくる話。まあその辺はご愛嬌として話を進めましょう。
今までの住民基本台帳は各市町村が独自に組み上げ、基本的にはそれぞれが繋がれることがなかった。例えば転居をしようとなると今住んでいる市町村で転出届を出し、さらに新しく住む市町村で転出届を出す必要がある(これは今でもそうです)。これはおかしい。市町村ごとにネットワークで繋がれているなら届は一回出せばいいだろう、と。または住民票にしても何らかの理由で住んでいるところ以外の市町村で取得する必要にかられても取得することができない。こういうのを各市町村をネットワークで繋ぐことで解決しようというのが住基ネットの基本理念だろうと思う。
ところが問題があって、各市町村の独自システムは未だに残って稼動している段階で、それとは全く別物として住基ネットは稼動している。システムとしては二重に稼動しているし、メインになっているのは各市町村独自のシステムだ。転居時に一回だけ届を出して済ますこともできるようにはなったが、その場合住基カードを持っている必要がある。ところが住基カードなんて人口の1%にも普及していない。つーことはほとんど誰もできないってことだ。
僕はこのへんに疑義を持っていて、これじゃ大赤字でもっとましなシステムを組み上げる必要があるだろうと思っていた。ところが黒字なのだ。黒字っていうとちょっと語弊があるけど。
住基カード180億円の便益があるらしい。さらに数年で900億円ぐらいになるし、現在でも180億円以内に運用費は収まっている、と。どこで便益が出てるんだ、と。
実はこのシステムは県や国*1も使うことができる。今までは国や県が気軽に「市町村で住民票を貰って書類に添付しろ」だなんて言ってたものが、住基ネットを利用することで住民票の添付を要求する必要がなくなる事務がある。それもかなり。
特に実感しているのが現在話題になっている年金のことなんだけど、年金ってただで貰えるわけじゃなくて毎年「現況届」というものを提出する必要がある。要は「現況」=「生存」なんですけどね。「生きてるから年金下さいと」「亡くなったらすぐ打ち切るぞ」を現況届でシステム化してるわけなんです。そこに魔法のコード、住民票コードを書き込むとあら不思議。来年から現況届を出す必要がなくなります。この住民票コードこそが国民にふられた背番号、唯一の番号であり、住民票と連動するためのキーです。死亡届はまず市町村に提出され、それがすぐ住基に反映される。そのデータと繋がってさえいればわざわざ「今年も達者でいるかね?」なんて年金受給者に問う必要はないのです。
この手間ときたら我ら市町村窓口担当にとっても馬鹿にならない。毎年何千万人の年金受給者が住民票を貰ってその生存を社会保険庁に報せる。これからはこの事務が一気に減っていくはずなのです(でもこれも申請主義なのよね)。
さらに年金が住民票コードと連動することになればこれがもっと顕著になります。そんなわけで稚拙な住基ネットであっても存在するだけでものすごい便益になるのです。ビタビタに濡れた濡れ雑巾を搾るぐらいに水の出る余地がある行政。国県市で共同にシステムを行うだけでダボダボ水が搾れる状態です。

*1:今ちょっと国の部分のソースが見つかってない