戸籍の仕事の思い出・非実在老人について少し

昔戸籍の仕事をやり始めた頃、「危ない!」とガクブルに思うことがあった。うちの職場では、一日分の戸籍届出を金庫のようなところに保管するのだが、保管場所は可動式の回転式書庫で、落ちると拾えないスペース(5cmの隙間で、深さ1mほど)があった(つまりはホントは保管すべきでないところに保管していた、と。)。
確か、配属されてまもなくのことだったので、僕はその保管方法に怖さを感じていて、「おや、今日は何かおかしいぞ」と思って覗きこんでみると、その落ちると拾えないスペースに届出が落ちていた!やべー!考えらんねー!!!
「だから僕「危ないと思います」って言ったのに!」と思ったが、ほんとにヤバいので知恵を絞って、長い箒の柄の先にセロテープを裏巻し、トリモチのようにして落ちた届出書に貼っつけて救出した。ほんとにヤバかった。
その前後の時期に、「異動した人の机の中からずっと昔に受けた届出書が出てきた」とかいう他市のニュースがあって、他人事じゃないなと思った覚えがある。うちの場合、届出を受付ると保管前に番号取ってるんですぐ発覚すると思うけど、紙ベースでの管理の怖さってのは感じた。
さて、非実在老人について。非実在老人でも、戸籍では死亡が届けられていたのに、住民票では消除されてなかったって話がある。それは(主に)当時の紙管理の弊害。今はパソコンが事務を手助けしてくれるのでミスは少ないと思うが、死亡届が出された市は、その人の住民票のある市に郵便で「住民票抹消してください」という通知を送る。これは今でもそうだが、人為的ミスが普通にありえる。
問題は、こういう紙管理の人為的ミスは事が済んだら発覚しようがないということ。台帳に番号を取る前に書類が紛失するとか、他市に書類を送ったと記録して実際送らないとか、もう絶対発覚しない。紙管理の限界だと思うし、行政の無謬性っていうか、ミスが起こっても発覚しないとか回復しないとか、もう、システムが悪いっていうか。何十年も続いていることだけど、方式を変えたほうがいいんだろうな。
そうすると電子的に届け出ることの是非ってことになるんだけど、デジタルデバイドって話になるのかな。
ところで豆知識。例えば字が書けない人もいると思うんだけど、そういう人はどのように戸籍の届をしたらいいのか。まあこうする人は皆無だけど、手ぶらで市の窓口に行って、口頭で届け出ることもできますよ。届出を出し漏らさせないように、手段は担保されてんだよね。