国替

ちらっと読んだ本に、「イギリスでは蒸気機関車の罐焚き手が、用もないのに電気機関車に乗務している」と昔言われていたようなことが書いてあった。イギリスでは職種別組合が強いからうんぬんかんのイギリス病の時代のことだろうけれども、それは今回の話ではない。
市役所はだいたい3年ぐらいで異動する。民間の人と話していて思うのが、異動の感覚が全く違うということ。市役所での異動は本当に素人に戻ってしまうことなのである。そんなわけでどれだけ仕事に対して経験豊富な人でも3年ぐらいの経験、というのが関の山。まあ僕が今職場で3年目なのでそんなようなもんなんですが。
どうして市役所の人間は与えられた仕事に対して文句を言えないのか。世間一般のイメージでは、公務員は働かないとか、そういうイメージもあるんでしょうが、まあ一般的には人間なので働きます。クビがないとか守られてるとかのイメージとは別の部分で、なぜ与えられた理不尽な状況であっても簡単に受け入れるのだろうか、というのは少し疑問な気がしていました。仕事が押し寄せる、範囲は広がる、制度は変わる、国や県は市より偉い、こんな状況を無条件で受け入れるのです。これはなぜでしょう。
とまあ結局3年で異動があるからでしょうね。職場のメンバーは固定しないし、ベテランになる=仕事を牛耳る前にまた異動する。勢い、職場にはベテランが不在であり、仕事を与える側としては断られにくい状況である。仕事を知っているベテランは、自分の仕事や自分の価値を高く売ることができるが、仕事を始めたばかりの人間は、与えられる仕事を受け入れるだけである。
そんなわけで3年前にペーペーで入った職場に、いつの間にかいろいろな仕事が下りてきていた。当時も今も下の立場であり、それに対抗するには我々は仕事に対する優位さに欠ける。そういえば江戸時代の転封、国替と同じようなものなのだろうか。それも一つのポジティブな方法なのかもなあ。