さて、今日まで3日間の戸籍研修でした。そんなわけで実態法の民法と形式法の戸籍法についてみっちり勉強してきたはずです。
戸籍ってのは身分関係を把握するための制度ですが、勉強してみて思ったのが日本の隅々まで民法と戸籍法の網が投げられているということ。アスベストみたいに日本を侵食しているのです。
制度を変えようにも考え方と制度が癒着しているのでおいそれと変わらないのです。政治の問題というよりは法学の問題だと思う。政治家も立法府で働く人間なんだから論争なんかせずに新しい民法と戸籍法を作ってみたらどうだ。誰もが納得できる法律を。法律を勉強してんのか、と。だいたい民法に家族関係の法律も入っちゃってるっておかしい気がする。契約とかと同列か、と。家族法の部分だけ抜き出して仕組みを組み直すとかしてもいい気がする。
まあ僕大学で文学部だったんでー。経済とか法律の話しちゃうとコンプレックスなんですけども。
で、上記「法律を勉強する」、って話だけど、現行の民法&戸籍法の担当する家族関係の中でかなり重要な概念が、「民法上の氏」と「呼称上の氏」なんですよ。昨日も書いたし、現に今回の研修でも相当触れられていた。例えば夫婦別姓という問題は政治の問題ではなく、民法と戸籍法の問題だと思うのです。民法の中では氏というのは明確に決まってしまうのです。出生時にまず決まる。婚姻時にも決まる。離婚時にも決まる。これは絶対に変えられない。だけど、それじゃ不便な場合もあるから「呼称上の氏」を使うことも民法の中で認めているのです。これはただ単に制度化されているだけで、かなり明確に本当の氏じゃないのです。離婚しても婚姻時の氏を名乗り続けていることができるけれども、これは本当の氏ではない、と。本当は婚姻前の氏に戻っているのです。
あれ、じゃあ婚姻時に婚姻前の氏を使うこと、要するに夫婦別姓は?これも言ってしまえば「呼称上の氏」です。民法に規定がない、制度化されていないだけで。つーことは本人の気概の問題とも言える。制度がないから名乗らないのか、制度があれば名乗るのか、という*1。あとはもう民法という怪物を退治する以外に氏を変える方法はない。
果たしてこういうことを理解して夫婦別姓に賛成、反対なのか、それとも理解していてもそれを広めないつもりなのか。
政治家なら法案を用意してそれを問えるようにしておけばいい。例えば、
「第750条(夫婦の氏) 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。」の後に、
「第750条の2 前項の規定により夫又は妻の氏を称した夫又は妻は、婚姻の日から三箇月以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、婚姻前に称していた氏を称することができる。」と加えればいい。コピペ改変しただけですが。
誰も民法も戸籍法も理解しないのに、議論なんてできるわけがない。こういうことを伝えていくことが必要だと思う。この段階で止めるなら、夫婦別姓なんて簡単な話だと思う。でもこれだけでも必要としている人が多いのなら、変える必要もあるはずだ。
制度の話なんてどうでもいいんですよ。ブラジル(ポルトガル式)は夫婦別姓のように見えるけど、単に結合させてるだけだからね。妻の姓は「実家の父の姓 夫の姓」ってだけ。夫の姓は「母方の姓 父方の姓」これ結局全部父系なんですよ。子供の姓は母と完全に同じになって、父だけ違うんだけどね、全部父方の姓を継いできてるの。まあある程度適当だって話もあるけどね。
韓国は夫婦別姓だけど、母方の姓を入れないってだけです。ポルトガルの反対で父子が同じ姓で母だけ違う姓。つまり、全部父方の姓を継いでくぞ、と。でもなんか母だけ除け者っぽいやん。
日本の夫婦同姓なんてもんも明治に苦慮した*2挙句に作った制度でしょ。中国韓国とそんなに違う制度だったとは思えないし。変に考えるなら夫婦同姓にしたのは男女平等を考えてのことかもしれない。少なくとも現民法はどうもそういう風に見える。現民法は汚いと思うんだけど、完全に男女平等なんだよね。それが結果として100%近い確率で女性が姓を変えることになるという状態を生んでいる。皮肉ともいえる。


電車の中で寝ていたら急に横の席のおっさんに話しかけられた。驚いて飛び起き、iPodのイヤホンを外す。何か僕ご迷惑おかけしましたか。「君若いけど、年金気になるの」僕の膝の上には「年金をとりもどす法」という本が。わちゃー、こんな本出しとくんじゃなかった。「僕市役所で働いてまして、仕事と関係あるもんですから」「市役所ならちゃんともらえるから心配しなくていいよ。僕も国家公務員だったけど、たくさんもらえてるよ。あ、仕事って窓口か。市役所にも窓口があるもんね。」「はい」「最近は払わない人多いもんな。僕らは今までたくさん支払ったからたくさんもらえるのが当たり前なんだよ。それを払ってない人が批判するのはおかしい。」「あー、ソウスネ」「最近は給食費も払ってない人がいるってね。けしからんよ。」「アーソウスネ」「どこの市役所」「○○市です」「あそこのどこそこの支店長の何々ってのが知り合いでね」「あー、いやちょっとわかんないすねー」「年金ってのもみんなから預かって2倍に増やす予定だったんだけど、今は利子がつかないから、しょうがないね」「…」「農家はむかし農地解放で儲けた、あんときはさんざん僕らも馬鹿にされたけど、今は立場が逆転したね。」等々。
疑問なんだけど、なんでおっさんには敬語使わないといけないんすかね。あと国家公務員の人は地方公務員に親近感抱くのかもしれないけど、こっちは皆無だから!敵だから!あなたたちは僕らを支配してるじゃないすか。
こういう「偉い人」こそが敵だ。まさに昨日読んだ「若者を喰い物にし続ける社会」に出てくる敵。お前なんで寝てる俺起こして話かけてくるんだ。で、何で俺が気を使ってるんだ。ほんと日本からは敬語をなくしたほうがいい。国家公務員の偉さをこんなにもストレートに体験して今日は朝から酷い気分だった。
こういう人たちが残した世界を変えていく必要があるんだぜ。


追記:上に書いた夫婦別姓の考え方だと、民法にあの一文を入れるだけで対応できる。戸籍法にもちょっと細工がいるだろうけど。夫婦別姓だと子供はどうなるんだ、ってのがあるけど、これはもう完全に決まっている。子供は民法上の氏になるだけ。つまり現実的には夫の氏になるでしょうね。ところで誰かこのアイデア出してんのかな、どっかで見たんだったかな。覚えてないや。
もう一個追記:呼称上の氏も民法上の氏も、戸籍上の氏になります。ただ、現行の戸籍法の原則として、戸籍には同じ氏の人が入ることになっているので、夫婦で氏が違った場合に記載する方法がありません。例えば戸籍に4人入っていたとしても、氏は一個しか書いてないのです。でもそれってどうでもいい話だな。

*1:気概がなければ制度があっても名乗れないだろう

*2:かどうかは知らないけどさ