合成の誤謬
http://www.adpweb.com/eco/eco309.html(経済コラムマガジンより)

したがって財政支出対して急に逆風が強くなった。「公共事業は業者を潤すだけだ」「これ以上国の借金を増やさないために、無駄な政府支出は削減すべき」といった風である。しかし民間も自己防衛のために同様の行動を採っている。企業は急ぐ必要のない設備投資は止め、個人は無駄な買物を控えるようになった。国民のこのような行動によって、かえってデフレの克服は難しくなった。さらに資産デフレが続き、不良債権がどんどん増えている状況であった。まさに逆噴射的財政政策である。


合成の誤謬」という言葉がある。これは個々の主体が正しい行動を採ることによって、経済全体ではむしろまずい方向に進むことを意味する。デフレ下で、それぞれの主体が自己の防衛を行うため、支出を控えることによって、さらにデフレが深刻化する今日の状態が「合成の誤謬」である。しかし一般国民がこの「合成の誤謬」の意味を正しく理解することは難しい。

世論の形成に大きな影響力を持つテレビには重大な欠陥がある。テレビは、取上げるテーマについて人々に深く思考させることが難しいメディアである。したがって「合成の誤謬」と言っても、簡単にはテレビの視聴者に理解されない。むしろ「政府は無駄使いをやめろ」「道路公団は民営化して合理化しろ」「銀行の経営者の責任を追求しろ」といったアジテーションの方がアッピールする。このようにまともな経済論議はテレビでは無理である。しかし今日求められている政治は、国民の理解が難しいこの「合成の誤謬」を解決する必要がある。

政府は富の再配分を考えるべきなんだろうなあ。経営もいいけどさ。