今日の話題はインドのマラソンキッド、ブディア・シン。毎度NHKである。スラムで拾った子供に天賦の才があると気付いたビランキ・ダス氏は、3歳の彼へのムチャクチャなトレーニングの末、4歳で65kmを走り切るという記録を打ち立てた。何がムチャクチャかってただ単に走ってる最中に水飲ませないとかそういうことなんですけどね。素人目には水飲ませてやればもっと走れるんじゃねーのか、と。そもそも素人が偶然気付くんだからムチャクチャ才能ある可能性ありますよね。今んとこそれがマラソンの才能かわからん気もするけど。
この話にはインドの奥行き深さが見えますね。9億人の中にはものすごい才能を持った人が眠っているかもしれんし、さらに9億人の中にはものすごく貧乏な人がムチャクチャしいるし、普通にお金を持ったスポーツ選手や、医者や、役人もいる。
彼ら(ビランキ氏ら)の暴挙は官憲の阻むところになる。正当な見立ての上、彼にムチャをさせるな、ということを言う人たちがいる一方、やれやれもっとやれ、と信仰の延長のような人もいる。当のビランキ氏(コーチ)がブディア君を神童だと思っている場合は、どこで歯止めをかけれるのだろう。
例えばインドの良識あるスポーツ界は、ブディア君を現在のコーチから引き離したいと思うだろう。素人目で見ても彼よりいいコーチはいくらでも(素人よりいいコーチでいいわけだから)いるからだ。でもスラムでブディア君を助けたのはビランキ氏なわけで、はっきり言ってブディア君の現在があるのはビランキ氏がいたからだ。引き離される言われはない、と思うだろう。
こういう状況が変わった後での配分の問題ってのはあるよなあ。最後通牒ゲームと同じような。果たしてインドはビランキ氏からブディア君を得ることができるだろうか、と。悪いことにビランキ氏がインドに与えようとしている結果と、インドが求めている結果は同じなんだろうけど。
でも9億人いるんならさ、こういう謎のヒーローで盛り上がったほうがいいのかもね。僕らが云々言える状況じゃないというか、スラムには第二第三のブディア君がいるのだろうし、それをほっておいているのは僕らでもある、と。