自転車でぶっ飛んだ。いや、「で」じゃなくて「から」。宙を舞った。
長い下りの途中、歩道には街灯もなく、途中に置いてあったゴミか何かが見えなくて思いっ切りぶつかってガンっつったはずみで宙を舞った。
そのまま右腰骨と右肘上当たりをアスファルトに打ちつけ、坂にガリガリ滑って上着を一枚ダメにした。ベルトとズボンもダメかもしんない。布越しに擦れて皮がおじゃんになって丸く下の身が丸見えになった。赤い。血がシャツについていた。
絶望とショック、悲しみ。自転車と僕の両方が何とか動いたので、泣き、喚き、嘆きながら帰ってきた。
「ひでー!ひでー!うううー!」というような泣き声だった。余談ながら僕はあまり涙を我慢しない。そっちのほうが自分が楽になる。
何が酷いかってそのゴミを歩道に捨てた人ですね。自転車のことをまったく考えていない。酷い世界だと思った。僕らは世界に殺される、いや、見捨てられると思った。世界は自動車だけを見ていて、自動車は自転車に一瞥もくれずにゴミを放り投げ、僕らを殺す。地面に這い蹲りながら思った絶望を、僕はアスファルトとともに身に擦り込んだ。
一応今は落ち着いたんですけど、けっこー酷い精神的ショックを受けました。でも絶対に自転車はやめない。転んでも転んでも続けてやる。これは世界からの挑戦だ。窓からタバコの灰を落とされても、排ガスを吹き付けられても、僕は絶対に負けない。僕の精神は負けてたまるもんか。車の撒き散らす絶望を、僕は受け止めてやる。僕は絶望を撒き散らしたくない。