環境問題とは何か 富山和子 (PHP新書
非常に面白く、一気に読んだ。
環境問題と一口に言うけれど、それが差すものはそれぞれの立場によって変わってくる。よく言われる捕鯨の問題や、ブラックバスなど外来種の問題、などなど。それらは人によってまったく異なる結論が出るだろう。
この本では水=緑=土というものは人間が作ってきたものであると言うことを明らかにする。決して自然状態=木々生い茂り水豊かな状態ではないのである。それは米作りのための治水利水植林によって育まれてきたものである、と。
水、というものは森林が雨を貯めて作るものだ。森林がなければ川は枯れるか溢れるかの2形態しかなくなる。さらには人工のダムとして水田がある。水田が貯めた水が地面に吸われ、川になる。日本が水の国であるのは森林と水田のおかげである。
しかし今の日本の社会は山に対して冷たい。水を作り、豊かな土壌を作り、さらには海で魚さえも作る。そんな山林を守る山村の人に対し、日本社会は簒奪するのみであった。
昔は公共事業といえば植林であったらしい。それならばこの不況のご時世、山の手入れを公共事業としてやったらよいではないか。そういうところでこそ補助金や優遇税制が生きてくるはずだ。まずは日本の林業が成り行くようなシステムを作るという選択肢があっていい。
わが静岡県では茶生産が盛んだ。僕の中では緑といえば稲や茶畑のことであって、自然というよりはまごうことなき人工物である。酸素を生産し、二酸化炭素を吸着するこれほど素晴らしい財はない。
これは保護して後世に残していくべきものではないだろうか。

追記:例えば水に関して言えば、水を作っているところと使うところが距離もしくは時間的に離れていることが問題をわかりにくくしているのだろうな、と思う。
水を使う都市の人にとって、それを作る山村の人や山林を作った昔の人の思いや努力などわからず、ただ蛇口を捻れば出てくるもの、と考えているのだろう、と。
せめて私達はその事実をしり、それに対する負担を受ける意思を持つことが必要と思う。